自律神経失調症と仮面うつ病
心因性の疾患である自律神経失調症は、その精神的症状のみならず身体的症状も発症してしまうため、専門医でも診断を間違いかねない症状です。
そして、そうした自律神経失調症と非常によく似た症状を発症する疾病があります。その病名は「仮面うつ病」です。
○仮面うつ病=一見すれば、うつ病に見えないうつ病をいいます。確かに仮面うつ病は自律神経失調症と同じように、気分が落ち込み(不安定)、何ともいえない倦怠感に襲
われます。しかしそうした精神的症状以上に、身体的症状(=頭痛・肩こり・腰痛・腹痛等々)が目立ち過ぎることで、うつ病と分かりづらい症状を示してしまうのです。
しかも仮面うつ病は、普通のうつ病とは原因が微妙に違うことがわかっています。
うつ病も自律神経失調症と同じように、ホルモンバランスの異常によって(視床下部・脳下垂体)、自律神経(交感神経・副交感神経)の働きが悪くなる疾病です。
仮面うつ病の場合、脳内伝達物質の分泌に大きく関与する疾病なのです。
○脳内伝達物質=人間の脳では、1000億個以上の神経細胞があります。その神経細胞同士が、お互いに情報を伝達し合うために必要な物質を脳内伝達物質といいます。
(様々な情報が神経細胞内を伝達することで、私たちは高度で活動的な生活をすることができるわけです。)
仮面うつ病は脳内伝達物質の中でも、「セロトニン」「ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)」という物質が減少することで、「気分が落ち込む」「倦怠感に襲われる」と考えられています。しかし、それだけではありません。仮面うつ病の奥底に潜むものは、他にもあると考えられています(=それほど、厄介な症状だといえます)。
どちらにしても自律神経失調症・うつ病・仮面うつ病は、気分の落ち込み・倦怠感と不定愁訴が同時に症状として表れることから、相互に重なり合った部分を持つ疾病であるといえます。
当然、精神的症状(気分の落ち込み・倦怠感)・身体的症状(頭痛や腹痛)が継続的に続くようであれば、信頼できる医師の元で診察を受診しなければなりません。
(万が一、いつまでたっても治療効果が見られなかった場合、セカンドオピニオン的に別の医師の所見を仰ぐことも重要です。)
それほど仮面うつ病は気付かれなければ、いつまでも仮面状態のまま発見されないこともあるのです。